ブログ「FC2」が発信者情報開示

FC2に発信者情報の開示命令

東京地裁は2013年2月、大手ブログサービス会社「FC2」に対して、ブログで他人を誹謗中傷した人物の情報を開示する命令を下しました。FC2は書類上の本社をアメリカに置いていたため、以前は日本で訴えられませんでした。しかし、2012年の民事訴訟法(民訴法)改正で海外企業も訴訟対象にできることになり、FC2も逃れられなくなったのです。

裁判の経緯

書類上の本社をアメリカに置くFC2

「アメブロ」(ameblo)と並ぶ大手ブログサービスであるFC2。ブログのほか、レンタルサーバーなどを展開しています。営業エリアは日本ですが、登記上は、米国ネバダ州ラスベガスに本社を置いています。

誹謗中傷ブログの削除を拒否

2010年、ある一般男性が、FC2のブログで悪質な誹謗中傷をされました。この男性は警察に相談した後、FC2に記事の削除を依頼したところ、最初のころは削除に応じていたものの、投稿者が次々と新しいブログを作っては同様の中傷を続けたことから、FC2側も「権利侵害が明らかでない」として削除を拒否するようになりました。

「発信者情報の開示」を求める

このようなネット上の名誉毀損事件では、まず、被害者がFC2のようなサイト運営業者に対して削除申請をするのが一般的です。削除に応じない場合は、書き込みをした本人を相手に裁判を起こすことになりますが、匿名で書き込んでいる場合は、まずその人物を特定しなければなりません。そこで必要になるのが、「発信者情報開示」というプロセスです。ブログ運営者会社が、ブログ投稿者の個人情報を訴えた人に教える行為のことです。

改正民訴法で提訴が可能に

しかし、従来の法律では、FC2に対して発信者情報開示を裁判で求めることができませんでした。FC2は登記上の本社がアメリカにあり、日本における代表者も主たる業務担当者も公式にはいないからです。ところが、2012年に改正された民訴法により、日本で活動する外国の会社も民事裁判で訴えることができるようになり、提訴に至りました。

判決

仮処分命令を受け入れて幕引き

公判に向けて東京地裁はネバダ州・ラスベガスにあるとされるFC2の本社へと呼び出しを行いますが最後まで誰も出廷することはなく、原告側の訴えがそのまま認められる形となります。そして2013年2月6日、東京地裁はFC2に対する発信者情報開示の仮処分命令を発令。その後、FC2は発信者情報を開示しました。

本件は、強制力をもたない仮処分命令にFC2が従って開示したという形で幕を引き、執行が困難という点は問題になりませんでした。しかしもしFC2側がとことん争う姿勢を見せれば裁判は長期化し、依然として解決は困難だったかも知れません。

海外の業者に情報開示させる

“ネット治外法権”は終わった

ブログでの名誉毀損が問題となった場合には、FC2のような業者に対して、まず「削除」を請求するのが一般的です。しかし「削除」に応じない場合は、発信者情報の開示を求めるしかありません。

FC2に開示命令が出されたことで、名誉毀損が明らかな場合、海外に拠点を置く業者であっても発信者情報の開示に応じさせるための道筋が一つできたといえます。

参考サイト: 裁判を担当した最所義一弁護士(港国際グループ)のブログ
http://minatokokusai.jp/blog/3566/

お問い合わせはこちら